『怪物』を観て【質疑応答】

質問1

「怪物」は結局なんなんですか?

 

解答1

「怪物」=相互不理解(dis-communication)

登場人物たちは皆、それぞれの立場や想いに従って行動をしています。明確な悪役が存在しないこの作品では、自身の立場や主張を乗り越えるかたちでの相互理解が欠如しており、これが原因となって、主役である二人の子どもは死という結末を迎えました。

母親も新任教師も校長も、ほとんどの人物はコミュニケーションが取れていません。そんななか、少年二人は秘密の基地において、心を通わせ合いました。怪物がひしめく作品世界において、あの二人だけはコミュニケーションを取ることができました。

結果的に、現実世界において彼らは死んでしまいましたが、最後のシーンで二人(の清らかな魂)は野原を駆け抜け、フェンスの消えた橋の向こうの世界(清らかな魂の集う世界)に到達できました。彼らは怪物に打ち勝ったのです。

 

質問2

あの二人の男の子は死んだんですか?

 

解答2

死んでいます。

はっきり描かれていないから、死んでいないという解釈もできる。そんな考えもあるでしょうが、やはり死んでいると結論づけることができますし、死んでいないという解答は不正解になると思います。

 

質問3

秘密の基地(電車)は何を意味していますか?

 

解答3

二人の世界です。

この作品世界には3つの世界があります。

・現実世界

・二人の世界[仮]

・清らかな魂の世界

二人はその出会いと交流によって、現実世界から二人の世界[仮]に移行しましたが、この世界はあくまで仮初です。この世界でずっと生きていくことはできない。決して動くことのない電車が秘密の基地になっているのは、二人の世界が[仮]であることの象徴といえます。

二人の世界にいても、電車はいつまでも動くことはないのです。

二人の世界[仮]は現実世界で起きた天災によって崩壊し、しかし二人は既に怪物に打ち勝った存在で、清らかな魂を獲得していますから、その先にある魂の世界へと到達しました。

 

質問4

伏線とか色々教えてください!

 

解答4

Youtubeとかブログとかでわんさか書かれています。それを見てください。

 

質問5

「魂」とはなんのことなんですか?

 

解答5

この作品において、「魂」とは「目に見えない、人の想いの塊」です。先述の解答のなかで度々「清らかな魂」という言葉を用いて説明してきましたが、これ自体は私が用意したものです。ただ、「魂」という言葉をもって指示しているものは、小学校に鳴り響く管楽器の音色のことです。

主人公の男の子と校長先生は、ともに誰にも言えない想いを抱えていました。校長先生は楽器に息を吹き込むことで、その想いを響かせようとします。校舎から屋上まで、学校中に響いたのは、何のリズムも節もない音の塊。しかしそこには確かに人の想いが込められています(だからこそ新任教師は自殺を思い留まることができた)。

これが私が「魂」という言葉で言わんとしていることです。作中ではっきりと描かれている、と言っても良いです。

少年二人の魂は二人だけの電車において交響し、分かち難く結びついた二対の魂は野原を駆け巡り向こう側に到達できた。「怪物」=dis-communicationの克服とは、単なる会話の蓄積としての意思疎通ではなく、あらゆる困難と無理解と視線とを経験した上で交響する魂の分かち難い結びつきによってのみ、達成されると考えられます。

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今日はここまで。

ほかに質問あればどうぞ。